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3-2. 藻類増殖材による海藻の生長促進
海底の基質に数μmの海藻類の胞子が着底すると、この部分は波による振動運動の境界層内であり流速は小さく、栄養塩の供給がきびしく制限される。一方、海中は競合の世界であり、海藻の幼体期の生長が速いと、付着動物との場の競合や種間競争に勝ち、藻場ができやすい。したがって、基質表面の境界層付近において、配偶体期から芽胞体期までの生長を促進できれば、より藻場が形成されやすいと考えられる。
このようなことから、幼体期の海藻の生長を促進する目的で、基質表面から藻類の生長に必要で不足しがちなリン、鉄あるいは珪素を長期間にわたって微量に溶出する増殖材を開発した。この素材はTab1e-2に示す成分のガラスであり、イオンの状態でl0年以上にわたって溶出する。海藻の光合成を促進する鉄は、藻類に直接利用されない粒状鉄(赤錆等)ではなく、細胞膜に直接とり込まれる2価のイオンで溶出する。マコンブ、カジメ等の閉鎖系、半閉鎖系の増殖実験では、増殖材を添加しない場合に比べ、明らかに幼体時期の生長促進効果が認められた、また、植物プランクトンである付着珪藻の増殖も確認された8)。
この素材を藻場造成に応用する方法として、増殖材を粒径3〜7?に破砕し、このガラス粒を露出させたモルタルプレート(Fig. 3)を基質とすることとした。このプレートを根固ブロック(エックスブロック4t型)に接着して、北海道日本海側の水深4.5mの冠砂地盤に設置したところ、2年目の調査では、現存量約33kg/?と、プレートを装着してない対照区に比べて、約1.5倍のホソメコンブが着生していた(Fig-4)。この他にも、各地で現地調査を実施中で、その成果も得られつつあり、藻場造成に応用できる可能性が高くなってきた、これらの詳細については別の機会に報告したい。
増殖材のプレートを消波ブロックヘ応用する場合、凹凸の形成と合わせることにより、入植促進と生長促進が図れる(Fig. 5)。
3-3. 消波工等への藻場造成手法
上記のような工夫を施した消波ブロックあるいは、特別な加工等を実施しない場合でも、消波工や海岸保全施設等で藻場造成の効果をあげるには、これまで蓄積されてきた藻場造成の手法阯が参考になる、以下に、簡単にまとめる。
?計画海域での事前調査;計画海域において、対象構造物と類似した物理環境(波、光、漂砂等)の場所において、海藻類の生育分布(水深帯)を把握し、対象種を選定する。期待する種が決まっている場合は、その種の分布を制限している主な要因を把握する調査を行う。
?設置場所の選定:対象種の生育水深帯に合わせて、構造物の配置計画を行う。海藻類に光が当たる必要があるので、表面加工等の処理を行ったブロックは表層に設置する。
?設置時期の決定;藻場を早期に造成するには、対象種の成熟期前にブロックの設置を終了する。沖防波堤等で近傍に天然藻場がない場合は、母藻投入(スポアバッグ等)による播種を行う。他の種(特に付着動物)が先に入植すると、期待した藻場が形成されるまでに数年を要する。ただし、その場の環境が対象種の生育環境に一致していれば、年数はかかるがやがて藻場は形成される。
?効果調査;施工後は可能な限り効果調査を実施し、今後の参考資料とする。特に、対象種の藻場が形成されない場合、その要因を把握し、工学的な対応策がとれるようであれば、その要因を排除する工事を実施する。

Table-2 Chemical composition of algae propagation material

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Fig-3 Plate with algae propagation material(250 X 80 X 30mm)

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Fig-4 Laminaria religiosa on 4-ton X-block after 2 years in the sea Plates with algae propagation material had been fixed on this block.

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Fig-5 Tetrapods surfaced with grooves and plates

 

 

 

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